墓石事例集.10「御影石ベニヤ染み」
□月○日「長いトンネルの暗さ」を抜けると、その先にはどのような空と風が薫るのかしら・・・?と思いを馳せながら、アクセルを踏み続けました。
日本で有数の長さで知られる、中央自動車道のトンネルをくぐり抜け、今回は信州、長野市での「石材ケア」に馳せ参じました。
当日は悪しくも曇天、雨模様の空に山肌の紅葉もくっきりとは散見出来ないながら、霞む彩りが風情ある・・・を想い起こさせます。
さて「芝台にベニヤのシミが出てきまして・・・」とは、ご依頼主からの仕儀です。
建立後短期日の変質に再建立もとお考えのお申し越しは、ご担当者の熱意あるご説明からも伺えます。
変質箇所は合計3カ所、写真と同様な現れです。早速施工の段取り、と相成りました。
この事例の仕様は、以前本誌で取材いただきましたDS−201システムでご紹介(平成13年2月25日号記載)
施工前 施工後
- 除塵し、必要箇所を養生
- 清水により、十分な洗浄
- 続いて、シミ除去剤を使用し反応を見ながら除去作業を繰り返します。
しかしながら、拝見するに恐らくこの現象は単なるベニヤ染みのみとは限らず、 俗に広く「サビ色変質現象」といわれる汚れの一種と思われました。 というのも、経験上、仮にベニヤ染みであればこの時点でかなりの部分が除去剤に反応し、除去できるケースが多いからです。
- そこで未除去部位にはサビ専用除去剤を投入。ウエス、シップで翌日まで反応を待ちます。
- 12時間以上のシップによりほぼ除去が完了。
竿石、上台、中台は鏡面、芝台はタタキ仕上げ、さらに拝石は水磨き仕上げと、それぞれ異なる石の表面に合わせ、使用する洗浄ツールも用途を使い分け、慎重にも慎重を期しました。
なにせ75年もの間子孫の幸せを願われていたお墓です・・・。
が、日差しが高くなったお昼過ぎにはケアが完了。
サビ色変質を吸い込んだウエスは、当然ながら当初の純白から黄変しています。
ご担当者は、珍しげに何度もデジカメのシャッターを押しておられました。
「墓石を展示・販売する折に木敷き養生剤やベニヤ板等の上に設置する場合は、
時間の経過により根石、芝台などに何らかの変質現象が伴いかねません。
極力避けるようにいたしましょう・・・」というのが、私の謂いです。
ご存知のように、石は呼吸しています。甘酸っぱい信州リンゴを丸カジリした晩秋の信濃路でした。
※石材呼称は、御影石、大理石、ライムストーン等の通称に従います。
古いお墓の経年劣化、諦めないで下さい。綺麗に磨きます!
ご先祖様代々のお墓を綺麗にお守りします。