建築石材の実例集.47 「大谷石 石蔵の再生」
○月□日 古(いにしえ)の財の象徴? 石蔵。今ではその存在さえも希少な大谷意思の石蔵を今に伝え、竿瀬尾そて活かそうというプロジェクトからのお声掛かりが、今回の案件でした。
あの戦災にも、この地域の地震にも、近隣よりの火災の類焼にも、屹立(きつりつ)として、耐え抜いた石蔵。 総大谷石(凝灰岩)づくりの石蔵も、時の経過で部位により剥落さえ始まり、風化垣間見られます。実は、竣工以来75年目の「ケア」なのだそうです。
「いまじゃ〜ねぇ、親父の唯一の遺産でね。当時この石蔵で普通の家が3軒建つんだ、とかよく聴かされたもんです。何とかねぇ、生かせなきゃね・・・」とは、お施主様のご意向です。
何故か、東南面の汚れが特に激しく、大谷石特有の苔・カビ・地衣類・藍藻(らんそう)類等の付着・変質現象が目立ちます。
「このドス黒い変色や苔が付いてるのは石の為に悪いんだよね?」
「はい、もちろん、ダメージですよ。経年で一層深く浸透して剥落、風化を早めます・・・」初回下見のお打ち合わせでの会話です。
私にも、どうしてこの部分のみが極端に変質が激しいのか、の疑問は残ったままでしたが、ご担当ゼネコンに仮設足場を設置していただき実作業となりました。
今回はその折に元請けゼネコンに提出した「施行要領手順書」をご参考に、そのまま授用します。
<石蔵外壁(大谷石)補修及び風化予防施行要領書>
一、目的
大谷石外壁石蔵周り経年の風化による欠け、剥離、部位による剥落を、石の成分を強化し、部位により補修、成形などを施し、以後より一層の風化、剥離等を予防する為、石材強化、浸透性保護剤塗布する。
二、石種
凝灰岩(大谷石)
三、場所
施工前 施工後
- 汚れ、(苔類、カビ、藻カビなど)の洗浄〜3種類のケミカル(中性・弱アルカリ・弱酸性)を順次塗布、洗浄、を繰り返します
- 4面全ての、汚れ洗浄(温水利用)終了後、乾燥の為1日おきます
- 成型補修の為、白セメントに色粉、強化剤などを含め、現状の色相に可能な限り整えます。欠けや剥落部位は、現況を参考に、出来る限り整え、目地補修も同時並行的に実施します
- 完了後、再度乾燥の為1日おき、乾燥具合を確認します
- 軟石石材強化剤を複数回塗布します
- 乾燥を確認後、浸透性石材保護剤を塗布
- 乾燥させ効果を確認し、完了
※ 参考: 使用した諸ケミカルのM・S・D・S(安全データシート)、及び過去の施行実績写真集を添付すると効果的です。
施工前 施工後
今回は案件が案件だけに、施行日数は一部手直しを含めて12日間を要しました。施工中ご近所の方々が時に見分され、「おお、きれいになるね〜。戦争でもこの蔵だけが焼けずに残ったんだもんな〜・・・」とつくずく見上げていたのがとても印象的でした。
ご尊父様もきっと、リニューアルできたご自慢の石蔵に、笑顔でうなずいていらっしゃることと確信した次第です。
※ こうしたデリケートなリニューアル・改修工事には、お客様との十分な事前打ち合わせが必要です。
例えば、単に変質現象が除去できても、全体を面で捉えて、色相などバランスを整えなければなりません。
また、既設大谷石に独特な表層の肌合いと兼ね合いも大切で、経年により、竣工当初からの表層変質を現状に合わせ、許容レベル、基準等を確認しながら遺漏無いように、剥落部位リメイク、色相のチェックをして、現況面との相似を考え整えることが肝要です。
※ 石材呼称は、御影石、大理石、ライムストーン等の通称に従います。
建造物の外壁や床などの経年劣化、綺麗に磨きます!
今まで、落ちなかった石材のシミや黒ズミの劣化汚れ・油性スプレーなどの落書きも消します!
石材洗浄はリフォームするより、早く安くお手軽です。
まずは、石材クリーニングの実績 → 施工事例集をご覧下さい。